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税務を取り巻く環境は、年々大きな変化を見せています。 このコラムでは、世の中の動きをプロの視点から できるだけ分かりやすく解説していきたいと思います。
6月号
事業承継税制で見落とされやすい点について

横断歩道に転がる子供用のヘルメット。

大きくひしゃげたフェンスの傍らに転がった小さな可愛らしい水筒。

最近、高齢者の暴走運転に幼い子供が巻き込まれるというニュースが立て続けに報道され、私を含め多くの方が胸を締め付けられる思いだったのではないでしょうか。

事故の報道後に運転免許を自主返納する方が増えているのは、もう悲惨な事故のニュースは見たくないと願う心の表れなのかもしれません。

高齢者の暴走運転は、国や地方自治体も大きな社会問題と考え様々な取り組みを行っています。

例えば、運転免許証に代わる公的な本人確認書類として運転経歴証明書の交付を行ったり、公共交通機関やタクシーの回数券や割引券を配布したりしているそうです。

ただ、運転から身を引く決断をさらに促すためには、国や自治体のみならず身近な人がいかに支えることができるかというこが今後の課題になるのではないでしょうか。

ところで、身を引くと言えば、税務の世界には一線から身を引く経営者から後継者へと事業を円滑に引き継ぐために事業承継税制という制度があることを皆様はご存知でしょうか。

そこで、今回のコラムでは事業承継税制で特に見落とされやすい点についてお伝えいたします。

まず初めに、事業承継税制が改正されたことはすでに過去のコラムでも取り上げました。

(どこが変わったかは2018年度3月号のコラムをご覧ください)

さて、ご存知の通り事業承継税制は、相続税について不安を感じている社長とその後継者にとっては非常に有効な制度です。

そのため最近ご質問をいただく機会がありますが、その中でよく見落とされがちな点についてお伝えいたします。

■ 事業承継税制で見落とされやすい点

1:兄弟間での財産の分割(遺留分)の問題

遺留分とは、配偶者や子などの相続人に一定の相続財産を受け取る権利のことで、例えば長男と次男がいた場合、原則としてすべての財産を長男に相続させることはできないこととなります。

そして事業承継税制適用時において、後継者とそれ以外の兄弟間でどのように株式以外の財産を分割するかという点でもめる場合が考えられます。

通常の相続と同様に、事業承継においても注意すべき部分となります。

2:後継者以外の兄弟のデメリット

後継者(株式を取得した者)は事業承継税制を適用することにより、株式に関する納税の猶予という大きなメリットを受けることができます。

しかし、他の兄弟は普通の相続と同じように納税する必要がある上に、通常よりも高い税率が適用されるおそれがあります。

これは相続税の税率が株式を含めた財産総額で決定するためです(事前に事業承継税制に関連する贈与を行った場合も同様です)。

そのため、他の兄弟は後継者だけが得をしたように感じてしまいます。

これらの問題を解決していくためには、まず①株式の評価を行い、②株式以外にどのような財産があるのか確認すること、そして③後継者にならない兄弟の理解が必要となります。

3:納税の猶予が終わるリスク

正確には事業承継税制はあくまで相続税の納税を猶予しているにすぎません。

そのため、猶予され続けるためにはいくつかの条件を守っていく必要があります。

例えば、相続した株式を保有し続けることや毎年(5年経過後は3年毎)税務署に届出書を提出する等があります。

これらの条件は、「さらに次の後継者」に株式を譲るまで継続します。

そして条件を守れなくなった場合には、猶予されていた相続税に加えて利子税を含めて納税することとなる点に注意が必要です。

事業承継税制をうまく使えば、税負担をとても軽くすることができますが、適用まで及び適用後にはいくつかの落とし穴があります。

もっと詳しく知りたい、または事業承継税制適用に不安があれば税理士等にご相談ください。

以上が、事業承継税制で見落とされやすい点についてです。

ちなみにですが、自主返納が全国で1位の静岡では2・3世代同居や近所の住人など地縁関係で支え合う環境があり、免許を返納したお年寄りのために車を出してくれる人が多いそうです。

最後に、私も一個人としてまずは身近な人のために力になりたいと、今回のコラムを書きながら強く感じました。

そして、最初は小さな力かもしれませんが、いつの日かそれが大きな力になってくれると信じています。

今回のコラムについて詳細を知りたい方は、お気軽に当事務所までご連絡ください。

2019/06/01
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